投稿者: 管理人
投稿日: 2006年10月24日(Tue) 18時08分58秒
会社人間さんへ
お待たせいたしました、ニュートン社より回答が参りましたので ご紹介します。
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まず、ご確認して頂きたいのは、譲受人(譲受会社)が、商法17条1項・会社法22条1項により、弁済責任を負う場合、そうだからと言って、譲渡人(譲渡会社)は責任を負わなくなるわけではなく、共に責任を負う(両者は不真正連帯債務に関係になります。)ということです。条文に「その譲受人も」「その譲受会社も」とあります。
商法17条1項・会社法22条1項は、営業・事業の譲渡の前後を通じて同じ商号が用いられる場合には、譲渡人・譲渡会社の債権者のような譲渡当事者以外の者にとっては営業・事業の主体の変更があったことを認識することが難しいため、外観主義に基づいてこれを保護するために、譲受人(譲受会社)が負う債務につき、譲渡人(譲渡会社)にも弁済責任を負わせたものです。
例えば、「株式会社桑田製作所」という商号の株式会社があるとします。その後、「株式会社桑田製作所」が、その事業全部を同業種の「株式会社清原製作所」に事業譲渡しました。「株式会社清原製作所」は、譲り受けた「株式会社桑田製作所」の事業を、「株式会社清原製作所」の商号のもと、継続していくこともできるのですが、もともとあった「株式会社桑田製作所」の商号をそのまま使用して、譲り受けた事業を継続していくこともできるのです。「株式会社桑田製作所」の名前に、営業上の名声・信用などが認められる場合には、「株式会社桑田製作所」の商号で事業を継続した方がよい場合もあるのです。
ただ、事業譲渡によって、事業の主体が変わった場合においても、「株式会社桑田製作所」の商号がそのまま変わらないのであれば、「株式会社桑田製作所」の債権者は、事業の主体が変わったことに気づかないのです。
ところで、後に学習することですが、事業譲渡が行われても、譲渡会社の債権債務が譲渡会社に当然に承継されるわけではなく、債権債務も譲渡されるためには、個別の債権債務につき、譲渡の意思表示が必要です。つまり、個々の債権債務につき、それぞれ、譲受会社に移転するという意思表示をしない限り、当然には承継されないのです。これは、合併の場合に債権債務も包括的に承継されるのと異なるところです。
そうしますと、「株式会社桑田製作所」の債権者は、「株式会社桑田製作所」の商号を継続して使用している場合には、「株式会社清原製作所」が譲り受けて継続している事業を見て、それが「株式会社桑田製作所」の事業だと誤解してしまう、ということが生じます。事業が継続されていれば、いずれ、履行期に到れば、自分の債権も弁済されると信じて、安心していますが、事業の主体が変わることを知れば、適当な措置を採ることができたはずだという場合もあるはずです。
そこで、「株式会社桑田製作所」が自己の債務につき弁済責任を負うのは当然として、「株式会社清原製作所」も、事業譲渡を受けて、かつ、「株式会社桑田製作所」の商号を継続して使用する場合には、一緒に弁済責任を負うことにしたというわけです。債権者保護のためなのです。
ただ、何ら請求もしてこない債権者に対しては、そのような債権者保護の措置は必要ないので、「譲渡会社の責任は、事業を譲渡した日後2年以内に請求又は請求の予告をしない債権者に対しては、その期間を経過した時に消滅する」(会社22Ⅲ)ものとしたのです。
譲渡人の商号を使用した譲受人の責任等については、商法第17条を、 譲渡会社の商号を使用した譲受会社の責任等については、会社法第22条を ご覧ください。
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よろしくお願いいたします。 | |